カテゴリー別アーカイブ: 雑食家のコラム

脳ブームと心について

脳科学のブームはいつ始まったのだろう。

科学ならまだしも、脳ブームとさえ言われていて、大豆、チョコレート、魚(ドコサヘキサエン酸)、ピーナッツから始まって、卵だとか、はたまたご飯(しょっちゅう食べてるよ!)が脳の活性化に役立つとかなんとか、喧伝されている。現代の日本人にとっては、脳科学から科学も取っ払われて、脳大好きな国民になってしまったかのようだ。

トンデモ本に書かれるならまだしも、最近ではビジネスの現場まで侵食され始めて、脳の活性化するノートの取り方とか、あのマインドマップさえ埃を払って取り出されているようだ(マインドマップって、私もそうだが、一度はやってみて、放り出したはず)。脳科学の知見に基づいたビジネスセミナーが開かれて、まっとうなエリート・ビジネスパーソンが踊らされている。
果たして、実利いっぺんとうの脳科学(まがい)で我々の生活が豊かになるのであろうか。

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カンニングが刑事事件か

あらためて言うまでもなく、今の世の中で大きな事件には、IT技術が関わっている。
京大カンニング事件は言うまでもなく、海上保安庁職員のyoutubeでの尖閣ビデオ流出の経路もそうだ。
政治家が自らの地位を失う原因も、最近はほとんどと言っていいほど、ネットからの流出情報ばかりである。故中川昭一元財務大臣が先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)で、酒に酔った姿も、youtubeで全世界に流されてしまったし、前原外相が、民主党代表を辞任したのも、偽メール事件が原因だ。
相撲の八百長が発覚したのも、IT技術が進歩して、携帯電話で消去していたはずのメールの記録が再生されてしまったからだった。いや、大昔のフロッピーディスクでさえ、下手な手つきで改竄したため、郵便不正事件をめぐる、大阪地検の前特捜部長らの逮捕という大事件に発展する。

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「三国志」はビジネスの役に立つか?

正月に入ったらDVD三昧の計画だったのですが、正月にならないうちに『レッド・クリフ』のPart2も観てしまいました。いわゆる「三国志」のハイライトシーンのひとつ、赤壁の戦いの映画化です。
諸葛孔明を、眉目秀麗な、あの金城武が演じています。知的な風貌がぴったりですね。しかも、三国志の記述どおり、羽扇を始終パタパタやっていて、戦いが終わると呉の大都督の周愈に「今後は庵で寝ていたいですね」とのたまうなど、孔明の超俗ぶりをかっこよく演じています。
実際の「三国志」でも、諸葛孔明ほどかっこいいスターはいないんですね。臥竜鳳雛(がりょうほうすう、とタイプすると一発で出てきます)と言って、才能を隠して畑仕事をしていたところ、劉備玄徳が3回訪ねていってやっと軍師になることを承諾したとか(三顧の礼)、とかく話題に事欠きません。
雲の動きで天候の異変を察知して、戦いを勝利に結びつけたりするのは序の口で、鬼面人を驚かす策を繰り出します。矢を調達するのに、藁人形を積んだ船で敵陣に乗り込み、たっぷりと藁に射掛けさせて、もらって帰ったり、敵兵を亀甲型の味方陣地の奥深くへ誘い込み、盾に守られた密集戦術で破ったりと、「三国志」を読む楽しさは、孔明の名探偵ばりの大活躍にあると言っても過言ではありません。(本のほうは、かなり楽しいです)

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『坂の上の雲』のブログライター

『坂の上の雲』の第二部が始まり、地上波デジタルの映像を録画して見始めた。録画しないと見逃してしまうので。
実は、第一部を何の気なしに見始めたら、NHKのあまりの力の入れように圧倒され、最後のほうはきちんと時間どおりに鑑賞していたのだが、解説を読むと3年に渡り毎年の年末に放送するというので、これまた驚いていたのである。大河ドラマ以上に、大金を投入して作っていて、低予算で作るミニ映画などを金額ではるかに上回っているだろう。
無論、司馬遼太郎の原作は大昔に読んでいた。しかし、あの作品は格好だけはそうであるけれど、小説として完全に破綻していると思う。その証拠に、作者・司馬氏自身が作中に解説者として顔を出し、「この小説は破綻して云々」と書き付けている始末である。もしかしたら、ヌーボーロマンのつもりであったのかもしれないが。

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謎のフロッピーディスク

またしばらく、投稿の間が空いてしまった。
民主党のごたごたについて、書こう書こうと思っていたが、あまりに低レベルな議論ばかりが横行するので、げんなりして、そのままにしてしまった。
ひとつ書いておくとすれば、菅首相は小沢グループの力を借りなければ政権運営ができないし、小沢氏も政権与党に留まるためには、反対派と手を組まないわけにはいかない、という当たり前の事実だ。お互い、相手の力を頼みにしているのであるから、対立も協力もするのは当然である。
子どもじゃないんだから、鳩山氏が風見鶏みたいに飛び回らずとも、民主党は挙党体制で政権運営を行うのが当然だ。トロイカだとか、なんだとか、派閥争いの記事が好きなのは、社内政治にばかり関心をもつサラリーマンのオジサンたちだけだろう。(だから、賃金労働者のオジサン向けの記事ばかりが流行る)

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「自炊」って知ってます?

asahi.comに、『「自力で電子書籍」派、増える』という記事が出ていました。
「本やコミックの背表紙を切り落とし、全ページをスキャナーで読み込んで自家製の電子書籍を作る人が増えている。新型情報端末iPad(アイパッド)など、電子書籍を読める機器の登場が追い風になり、裁断機やスキャナーの売り上げも伸びている。」とのこと。
薄々聞いてはいましたが、自分で蔵書をスキャンして持ち歩いて読む人が出てきているんですね。
ま、昔の「エア・チェック」と同じでしょうか・・・

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事業仕分け VS インフレターゲティング

やはりこうなったか・・・という感の強い、参院選の中間結果。
こうなったというのは、民主惨敗、というより、旧党派退潮と第三極、つまりはみんなの党の躍進のことである。
すでに、消費税増税論議にいきなり火がついてしまい、あれよあれよという間に選挙の争点になってしまってからは、増税なき財政再建(ちょっと疑問だけど)を掲げるみんなの党が人気を博していたことからも、結果は見えていた。
このままでは、議席0から、いきなり二桁に乗せかねない。渡辺喜美という政治家、なかなかのヴィルトナを持っていそうである。
一つ前の書き込みで、うかつに「新政権には、大きく3つの使命があるだろう。ひとつめは、破綻寸前の借金財政の建て直し、すなわち国民への説明責任を果たして、消費税率アップを実現することだ」などと書いてしまったのがいけなかったかもしれない・・・

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フォルトナとヴィルトナ

政治家は、その出自に、自分の力ではどうにもできない宿命を負っている。このことを、『君主論』のマキャベリは、著作の中で、君主に必要な資質は、フォルトナとヴィルトナだと表現した。
君主は、力(ヴィルトナ)だけでは国家を治めることはできず、運(フォルトナ)を持たずば君主たりえない。逆に言えば、力およばず、一敗地に塗れても、運がなかったと慰めになるやもしれない。
小泉、安倍、福田、麻生、鳩山と続いた政権は、最初のひとりを除き、フォルトナ(世襲という僥倖)はあったけれども、ヴィルトナがなかった。そう考えると、フォルトナとヴィルトナを併せ持った小泉純一郎こそ、5年の長期政権を全うするための条件を完備していたのだと言えるだろう。

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