月別アーカイブ: 2007年10月

サブプライムは自己言及的バブル?

久々に株価暴落。
「サブプライム問題の先行きはもう見えたんじゃ?」という楽観論が高まっていた。
ここ1ヵ月くらいアメリカも日本も、まあ順調に上げてきた。
一昨日のG7が「打つ手なし」と声明したも同然なのがよくなかったかもしれない。
8月にサブプライムで暴落したとき言ったように、基本的に株はホールド方針。
だが、最近の楽観論に懐疑的だった私は、買値に戻ってきた銘柄はどんどん売り、ほぼ半分くらいに身軽にしてきた。
何とか堪え忍んでいるが、明日からどうなることか。

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書店は瞬時に情報の歪みを除く市場だ。

『佐藤可士和の超整理術』を、広告代理店出身の編集者に薦めたら、こんな反応が返ってきた。
マーケッターは無色透明になろうとしている。
自分の好みを入れずに分析する。
対して編集者はマーケット分析すらせず、自分の好みで押し通す。
佐藤の本を編集論として読むのは無理があるのでは?
そうだろうか。
改めて書店というものを見てみよう。
今更ながら本の多さに驚く。
書店はまるで株式市場のようなものだ。
足りない情報は瞬時に充足され、株価に反映される。
消費者が足りないと考える本は瞬時に書店に充足される。
たとえマーケット分析すらしない強引な企画であっても、何人もの著者や編集者の活動を通して、それらは消費者が足りない情報を満たしていく。
結果として、マーケッターが考える読書市場を実現する。
マーケッターと編集者は、まったく異なるアプローチで、同じ結果を作り出すのだ。
だから、この本を編集論として読むのは可能なのだと思う。

ビジネス書はネジである。

『佐藤可士和の超整理術』の中に、ユニクロの話が出てくる。
ユニクロのニューヨーク旗艦店のADを依頼された。
それで柳井会長にヒアリングをしたとき、感銘を受けた言葉があった、という。
「服は服装の部品です」
ユニクロは部品(パーツ)としての服を作り、それを客が自由に組み合わせるのだ、という。
この箇所でも目からうろこが落ちました。
トータルファッションではなくパーツ。
だからユニクロは同じアイテムに圧倒的なカラーバリエーションを備える。
昔の鉄道模型ファンからすると、ユニクロのあの品揃えが、部品を圧倒的な物量感で陳列する模型店のように見えたのは、そのせいなのかもしれない。

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プロの仕事を視覚化した本『佐藤可士和の超整理術』

元博報堂のクリエイター。
日経系の雑誌などを通じて、「とにかく仕事ができる人」としての認知度抜群。
…なんてことはわかっていたが、ビジネス書編集者としては、
「やられた!」
の一言だ。
これ、いい本である。
プロとして日頃やっていることを言語化しているので、ものすごくリアリティがある。
というか、エラそうに言えば、小生だってやっているようなことなのだ。
この著者にとってのクライアントが、私にとっては著者。
だから、
「大切なのは相手の思いを整理すること」
「整理するには客観的な視点が不可欠」
「思考回路の整理をきっちり行うようにしたら、あいまいな部分がどんどん消えていく」
「問題の本質を突き止めることとは、プライオリティをつけること」
「他人事を自分事にする」
「問題解決の手がかりは必ず対象の中にある」
といった主張は、むしろ当たり前のようにやっている。
しかし、こういうふうに視覚化してはこなかった。
それが新鮮なのだ。
デザインとは整理である、と著者は言う。
デザインを編集に置き換えても、この本の内容は成り立つ。
編集も、整理である。

私の履歴書

日経新聞の最終面の「私の履歴書」というコラム。玉石混交なんだけれど、たまに面白くて身を乗り出す連載がある。そりゃまあ、かつて身を乗り出して読んだのは、「愛の流刑地」だったりしたけど、たまには「私の履歴書」も読むのだ。
たいがい、著者はある程度、年齢のいった登場人物なので、話の内容はといえば、子供時代は自由奔放に育ったけれど、戦争中は苦労した、とか出征して九死に一生を得た、といったくだりが多い。退屈な話だ。それに歌舞伎の何代目とか、企業の最高顧問でかつて豪腕で鳴らした某とかも興味ない。しかし、長嶋茂雄とか、水木しげるとかだと、読まないわけにはいかないのである。

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