月別アーカイブ: 2011年5月

政治の「空気」(311後の世界8)

空気の話はこれぐらいにしようかと思っていた。
が、空気を読める政治家が発言したので、取り上げたいと思う。
およそ、政治家にして空気が読めなければ、政局の潮目も読めない道理であり、政界を生き抜いてゆくことなど到底かなわないだろう。
政治の一寸先は闇とよく言われるが、それは空気の読めない政治家の台詞であって、政治家は一寸先を見通すどころか、一瞬のうちに身を翻してみせることも芸のうちだ。
たとえば、犬猿の仲と思われていた、民主党の渡部恒三最高顧問と小沢一郎元代表が、よりによって合同誕生会で和解するなどということは、事情のわからぬ外野から見れば、一大椿事にちがいない。が、そもそもこのふたりは、表面的には仲が悪いように見えるけれど、お互いが相手を利用しあっている関係なのであり、現に前原誠司前外相がこの誕生会の音頭取りであるのがその証拠だろう。
渡部最高顧問は、小沢元代表に近づくことによって、自らが推す、ポスト菅の首相候補が前原前外相であることを印象付け、自らは衆院議長など名誉職就任のお墨付きをもらうつもりでもあるのではないか。
菅首相がG8に出かけている隙に、あっという間に身を翻す老獪さ。79歳にしてこうなのだから、政治家たるもの、空気を読んで豹変するぐらい朝飯前にちがいない。
いや、民主党内の政権たらいまわしなど、この際どうでもいいだろう。
空気の読める政治家の発言とは・・・

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東電の「空気」(311後の世界7)

まったく何をやっているのだか。
今日(2011年5月26日)のニュースでは大騒ぎ。福島第一原発の1号機で、地震の翌日、海水注入が1時間ほど中断したという今までの報道は間違いとのこと。東電で調べたところ、現場の社員の判断で、海水注入は継続されていたのだとか。
それまで海水注入の中断は、菅総理の指示で行われたとされ、国会では野党の追及の的だったわけだが、まったくの空騒ぎだったということになる。その菅首相に、海水注入は臨界を引き起こす可能性があるという、いらぬ助言をしたのが、班目春樹・原子力安全委員会委員長ということになっていて、さんざんマスコミに叩かれていた。
あらぬ展開に、班目委員長も、困惑顔で「私は何だったんでしょうね」とこぼす始末。
それはともかく、本件を説明した東京電力の武藤栄副社長は、記者会見で、例の一言をしゃべっていた。一言とは・・・

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空気の研究(311後の世界6)

気分について書いたのなら、この本に触れないわけにはゆかない。
山本七平の代表作のひとつの『空気の研究』だ。
近代以降の日本は、理性では間違っているとわかっていながら、抗することのできない「空気」が支配している、というのがこの本の主張だ。太平洋戦争末期の、戦艦大和の沖縄出撃も、戦術的にはまるで無謀とわかっていながら、誰もそうとは言い出せない「空気」が支配していた。あるいは、著者の担当編集者は、「いや、そう言われても、第一うちの編集部は、そんな話を持ち出せる空気じゃありません」などと、「空気」に自らの意思決定が拘束されていることを暴露する。

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ヘーゲルの不安(311後の世界5)

以前、このサイトのどこかに、ヘーゲルの有名な主と奴の弁証法を取り上げた。
そこにも、不安が重要なキーファクターとして出てくる。
主は、主として人間的にふるまうことができるが、奴が人間的であるのは、最初は自己が主に対して隷属的である中で人間性を次第に発展させ、完成することによる、というちがいがある。つまり、奴は主の命令によって生かされているに過ぎないから、自己の人間性は、自らの自由にならないが、一方、主は何者にも妨げられることなく、主体的に自由を行使できるのだ。最初は。

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水の「不安」(311後の世界4)

というわけで、『博士の異常な愛情』を唐突に持ち出してしまったけれど、この映画には「不安」を象徴する逸話が出てくる。
ある日突然、ソ連の謀略に対して妄想が膨らみ、ひとりで勝手に、大統領の許可もなくソ連に対する核攻撃を命令したリッパー将軍という人物が、物語の発端に登場するのだ。そうして、司令部に立てこもると、ピーター・セラーズ演じるマンドレイク大佐に、「水道水にフッ素が入っているのは、共産主義者の陰謀だ」と熱く説く。
どうやら、アメリカでは虫歯予防のために、ほんとうに水道水にフッ素が入っているらしいが、ほんとかどうかは知らない。ちなみに、セラーズはこの映画で、ストレンジラブ博士、大統領、英国空軍大佐マンドレイクと、1人3役をこなしている。

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博士の異常な愛情(311後の世界3)

「気分」だとか、対象をもたない「不安」だとか書いたけれど、当然、反論ばかり起きるにちがいない。
曰く、対象はあきらかで、次の大地震や、繰り返し起きるかもしれない原発事故に決まっているだろう。だから、今まで隠れていた「不安」の「気分」が改めて露わになったなどということはなくて、地震や原発事故がなくなれば、消えるはずだ。
「気分」などという曖昧なものに支配されているのではなく、ましてや、対象のない「不安」のせいで水を買い占めるのではなくて、放射性物質の恐怖に駆られて、無駄な買い物に走っているのである。云々・・・。

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不安な気分(311後の世界2)

311後の世界を象徴する、もうひとつの現象は、不安な気分だろう。
「不安」とか「気分」とか、あんな大災害が起きたのだから、当たり前だろうと言われるかもしれない。
しかし、ここでいう「気分」とは、その昔、実存哲学、特にハイデッガーが言った「気分」のほうに近い。ハイデッガーの「気分」とは、単なる知覚や感情ではなく、人間の存在を規定する時代精神の根本的情調性のことだ。
根本的情調性などという、わけのわからない言葉を使うのはやめてくれ、と言われそうなので説明すると、ふだんは気づかないが、ひとたび大事が起きると露わになってくる、人間の存在を基礎づける根本的「気分」のことである。
同じコトをたとえば、藤田省三氏は、太平洋戦争直後、思想の崩壊した後、その土台を構成する「気分」や情緒というものが注目されたと言っているが、311後はちょうど同じことが起きているのだろう。

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浜岡原発停止(311後の世界1)

東日本大震災の衝撃があまりに大きく、ずっと書けないでいたが、その後、311後の世界を象徴するような大事件が起きたので、なんとか書いてみることにした。
大事件とは何か。
ついに、浜岡原発が停止となったことだ。
浜岡原発とは何か。
東海地震の震源地の真上(御前崎近辺)に立地し、東日本大震災が起きる前から、危ないと言われつづけていた原発だ。

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