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アプリで蘇るストップモーションアニメの世界

先日、カンヌ国際映画祭で、日本最古の長編アニメーション『桃太郎 海の神兵』(1945年上映)のデジタル修復版が上映されて話題になった(AmazonからオンデマンドDVDも発売されている)。これはセルと呼ばれる透明シートに描いてフィルム撮影したもので、その後の手塚治虫をはじめとする日本のアニメーションに多大な影響を与えてきた記念碑的作品だ。

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被災地とアート

東京芸術大学大学美術館で、「いま、被災地から-岩手・宮城・福島の美術と震災復興-」という美術展が開催されている(6月26日まで)。これは2011年の東日本大震災で大きな被害を受けた陸前高田市立博物館や石巻文化センターの復興の経過の報告と、東北地方ゆかりのアーティストの作品を合わせて紹介した稀有な企画である。

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脳ブームと心について

脳科学のブームはいつ始まったのだろう。

科学ならまだしも、脳ブームとさえ言われていて、大豆、チョコレート、魚(ドコサヘキサエン酸)、ピーナッツから始まって、卵だとか、はたまたご飯(しょっちゅう食べてるよ!)が脳の活性化に役立つとかなんとか、喧伝されている。現代の日本人にとっては、脳科学から科学も取っ払われて、脳大好きな国民になってしまったかのようだ。

トンデモ本に書かれるならまだしも、最近ではビジネスの現場まで侵食され始めて、脳の活性化するノートの取り方とか、あのマインドマップさえ埃を払って取り出されているようだ(マインドマップって、私もそうだが、一度はやってみて、放り出したはず)。脳科学の知見に基づいたビジネスセミナーが開かれて、まっとうなエリート・ビジネスパーソンが踊らされている。
果たして、実利いっぺんとうの脳科学(まがい)で我々の生活が豊かになるのであろうか。

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希望のつくり方と、絶望とのつきあい方

世の中には、いろいろな本がある。いろいろあるものだから、仕事や私生活がうまくゆかず、何をする気も起きない時、役に立つ本さえある。そのうち、希望について書いた本と、絶望について書いた本を紹介したいと思う。

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地方消滅と再生のための3つの処方箋

2014年の夏、元総務大臣の増田寛也が発表した(編著)『地方消滅』が、論議を巻き起こした。少子高齢化の日本社会に何も手を打たなければ、896の市町村が消滅する、というのである。消滅といっても、何も国土が消えてしまうわけではなく、2010年から40年までの間に「20〜39歳の女性人口」が五割以下に減少し、税収は減り、自治体サービスを継続できない事態に立ち至る、ということだ。これらの市町村を、この本では「消滅可能性都市」と刺激的な言葉で呼ぶ。

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野火 新たに生まれた人間改造のイメージ

塚本伸也監督の『野火』を観てきた。上映後、観客は、いちように重々しい顔で映画館を出てきた。次々と兵隊が殺されてゆくときの、あまりにグロテスクな戦闘描写に辟易しながら。これほどリアルな反戦映画は他にない、というところかもしれないが、ほんとうにそうだろうか。

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現代の三国志

先日、エマニュエル・トッド著の新書、『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』(文春新書)を読んだ。
ユーロ圏ヨーロッパを政治的、経済的に支配するのはドイツである、巷間言われるロシアの覇権主義は偏見に過ぎず、逆にウクライナの親西欧派は危険な集団だと、常識を覆して論じた、話題の書だ。この本が売れた理由は、トッドの語る世界情勢解釈が、新聞報道とはまるで違っており、欧州の事情に疎い我々日本人にとって、実に意外なものだったからであろう。

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運を支配する

再開第1回のBサファリ記事を何にしようか、ずっと考えていた。
考えすぎて、書けなくなっていたので、手近なところで本の感想から行くことに。仕事でスランプに陥った時、読むといいかもしれない本。

ふと昼休みにのぞいた書店の新書コーナーで、目に止まったのがこの本、『運を支配する』(幻冬舎新書)。著者は20年間麻雀無敗の記録(って、そういう記録があるのを初めて知った)を持っている桜井章一氏と、サイバーエージェント社長の藤田晋氏。最初は、なーんだ、オカルト本かと思って、書店のフロアを後にしてエスカレーターで一つ下の階に降りたのだが、ふと気になって再度上がって買い求めた。
「運」についてのオカルト本に、何ゆえ藤田氏なのだろう、という疑問からページを繰ると、どうやらサイバーエージェントの社長は無類の麻雀好きらしい。というよりも、昨年、「麻雀最強位」タイトルを獲得というから本格的だ。その二人が師弟関係にあり、桜井氏、藤田氏の順番で「運」を呼び込むための秘訣を経験的に述べた本なのである。 続きを読む 運を支配する

書籍の復権(311後の世界14)

シャープのガラパゴスが、発売10ヶ月目で撤退した。
このことは、電子書籍事業を推進しようとしていた、同業他社に少なからぬ動揺を与えたにちがいない。
それかあらぬか、シャープは撤退発表の直後に、ガラパゴス事業は継続し、今後は書籍だけでなく幅広いコンテンツを扱うことが可能な、新しい端末を市場に再投入すると「わざわざ」付け加えた。
この報道を知って、市場は今後の電子書籍市場の行く末を、どう捉えただろうか。
のみならず、日本の書籍市場の行く末さえも、案じられるような事態に見えただろうか。
市場がどう反応するかはさておき、今後、書籍が復権するためには大事な条件があると、私は思うのだ。
以下に、その理由を書いてみる。

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