カテゴリー別アーカイブ: こんな時には、こんな本

希望のつくり方と、絶望とのつきあい方

世の中には、いろいろな本がある。いろいろあるものだから、仕事や私生活がうまくゆかず、何をする気も起きない時、役に立つ本さえある。そのうち、希望について書いた本と、絶望について書いた本を紹介したいと思う。

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地方消滅と再生のための3つの処方箋

2014年の夏、元総務大臣の増田寛也が発表した(編著)『地方消滅』が、論議を巻き起こした。少子高齢化の日本社会に何も手を打たなければ、896の市町村が消滅する、というのである。消滅といっても、何も国土が消えてしまうわけではなく、2010年から40年までの間に「20〜39歳の女性人口」が五割以下に減少し、税収は減り、自治体サービスを継続できない事態に立ち至る、ということだ。これらの市町村を、この本では「消滅可能性都市」と刺激的な言葉で呼ぶ。

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現代の三国志

先日、エマニュエル・トッド著の新書、『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』(文春新書)を読んだ。
ユーロ圏ヨーロッパを政治的、経済的に支配するのはドイツである、巷間言われるロシアの覇権主義は偏見に過ぎず、逆にウクライナの親西欧派は危険な集団だと、常識を覆して論じた、話題の書だ。この本が売れた理由は、トッドの語る世界情勢解釈が、新聞報道とはまるで違っており、欧州の事情に疎い我々日本人にとって、実に意外なものだったからであろう。

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運を支配する

再開第1回のBサファリ記事を何にしようか、ずっと考えていた。
考えすぎて、書けなくなっていたので、手近なところで本の感想から行くことに。仕事でスランプに陥った時、読むといいかもしれない本。

ふと昼休みにのぞいた書店の新書コーナーで、目に止まったのがこの本、『運を支配する』(幻冬舎新書)。著者は20年間麻雀無敗の記録(って、そういう記録があるのを初めて知った)を持っている桜井章一氏と、サイバーエージェント社長の藤田晋氏。最初は、なーんだ、オカルト本かと思って、書店のフロアを後にしてエスカレーターで一つ下の階に降りたのだが、ふと気になって再度上がって買い求めた。
「運」についてのオカルト本に、何ゆえ藤田氏なのだろう、という疑問からページを繰ると、どうやらサイバーエージェントの社長は無類の麻雀好きらしい。というよりも、昨年、「麻雀最強位」タイトルを獲得というから本格的だ。その二人が師弟関係にあり、桜井氏、藤田氏の順番で「運」を呼び込むための秘訣を経験的に述べた本なのである。 続きを読む 運を支配する

ニーチェの言葉

311後の世界に、少し飽きたので、本のことなど。
最近、ニーチェを取り上げる本が多い。
それも、ニーチェの専門家ではなく、まるで畑違いの書き手の作品だ。
有名なのでは、斉藤孝のニーチェ本。それに、ベストセラーがかなり長く続いている『超訳 ニーチェの言葉』だ。
この本、タイトルの頭に「超訳」とついている。「超」とは何か。意訳とはちがうし、抄訳でもないとしたら、実に奇妙なタイトルだ。
中の文章には、「たとえば仕事の場合では、売り上げを伸ばすことだけがたった一つのなすべき目的のように錯覚してしまったりする。しかしそうすることで、仕事をすることの意味は失われてしまう」などというのが出てくる。
「売り上げ」などという言葉を、ニーチェが使ったようには思えないので、こういう訳しかたを「超訳」と名づけたのかもしれない。現代風に、文章をアレンジしたということか。

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ビジネスパーソンのための鄧小平

ゴールデンウイークの休みの間に、ベンジャミン・ヤンという、中国人で、鄧小平の息子とマブダチだという学者の書いた、『鄧小平 政治的伝記』(岩波現代文庫)を読んだ。
私はわりと鄧小平という政治家には興味を持っており、いくつか伝記を読んでいて、同書も気になっていたのだが未読のままにしていたのを、連休中にふと思い立って、巻おくあたわずという感じに読みきった。それほど、面白かったのである。

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ビジネスパーソンは、フロスト警部をめざせ!

2008年に、久しぶりにミステリーのフロスト警部シリーズの新刊翻訳が出た。『フロスト気質』(R.D. ウィングフィールド (著)創元推理文庫)である。
このシリーズは、およそミステリーファンなら、読まない人はいないと思われる人気作品だ。だから、特に解説はいらないと思うが(なぜなら、ネットに山のように感想文が書き込まれているから)、今さらよく読んでみると、フロスト警部もの、ビジネスパーソンのロールモデルとしても読めるんですね。

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大暴落 2008

FRBのバーナンキ議長が、サブプライム問題での判断ミスを認めたらしい。実にあっさりしたものだ。自分で言わなくても、FRBの対応が後手に回ったことぐらい、衆目の一致するところだろう。
ジョン・ケネス・ガルブレイスの著書、『大暴落 1929』(日経BP社)を読むと、1929年のFRBも同じ過ちを犯したことが書いてある。すなわち、FRBは景気を悪化させることに対して臆病になり、崩壊寸前の市場に対して、沈黙を守っていたのである。
というわけで、『大暴落 1929』を通して、今の世界恐慌を透かしてみると・・・

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『座右のニーチェ』斎藤孝(光文社新書)を読む

仕事に役立つ哲学本、メタフィジクスというのはありふれた発想で、現に私も「ビジネスマンのメタフィジクス」などといういつ終わりになるやも知れない企画を、亀の歩みで書き続けている。
斎藤孝先生といえば、大ベストセラー『声に出して読みたい日本語』の作者で、今は『座右の』シリーズが売れている。その1冊に、ニーチェが取り上げられていたので、「おや」と思い、読んでみた。
斎藤先生とニーチェの取り合わせに、意外な感がしたのだ。

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ゴールデンウイークはこんな本!~『巨匠とマルガリータ』

ゴールデンウイークでしたいこと。
ヨーロッパの某国へ旅行に行きたい、国内の秘湯でのんびりしたい、まだ滑れるスキー場で初滑り(?)を愉しみたい・・・などなど、いろいろあるけれど、私の場合、ひとつ選ぶなら、ふだん読めない長尺モノの本を読むことだ。
ま、日ごろ無計画に生きているせいで、いざゴールデンウイークに突入した日には、すでに旅行の計画は遅きに失しているからでもある。
それはそれとして、今年ねらっていたのは、この本、『巨匠とマルガリータ』。
旧ソ連時代の作家、ブルガーコフの、死後公表された作品である。噂どおりの、奇想が炸裂する、20世紀の大傑作だった。

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