「自炊」って知ってます?

asahi.comに、『「自力で電子書籍」派、増える』という記事が出ていました。
「本やコミックの背表紙を切り落とし、全ページをスキャナーで読み込んで自家製の電子書籍を作る人が増えている。新型情報端末iPad(アイパッド)など、電子書籍を読める機器の登場が追い風になり、裁断機やスキャナーの売り上げも伸びている。」とのこと。
薄々聞いてはいましたが、自分で蔵書をスキャンして持ち歩いて読む人が出てきているんですね。
ま、昔の「エア・チェック」と同じでしょうか・・・


・・・「エア・チェック」なんて言葉、今では完全に死語ですが、FM放送をカセットテープに録音してコレクションすることを、1970年代にそう呼んでいたんですね。
語の意味としては、FMの無線波が、エアの中を飛んでくるのを、番組表を見ながらチェックするわけです(いちおう、知らない世代のために書いておきます)。あのころは、カセットデッキと、カセットテープが飛ぶように売れた時代。より音質を重視する向きは、オープンリールに録音していたのですが、FM波の音源に音質を求めるのも今となっては不思議な感じです。
それはともかく、学生時代は金もなくレコードとかCDとかやたらに買えませんでしたので(貧乏だったので)、せっせと「エア・チェック」に励んだものでした。当時は、洋楽全盛時代でしたので、毎週のヒットチャートの上位をチェックしていましたし、年末に放送される年間のヒット総集編はかならず録音して、スキー場に向かう車のカセットデッキで聴いていました。
そしてやがて、バブルが訪れて・・・
・・・バブルが来て、ジャズでもクラシックでもCDで買い放題になった後、MDが出て、iPADが出てきて・・・音楽鑑賞のメディアは完全に電子化されました。これは、結局、自力で「エア・チェック」していた過去の延長線上にある結果でしょう。
「エア・チェック」がそうであるように、電子書籍化もきっと草の根から始まるのにちがいありません。と思っていたら、もうすでに始まっていて、スキャナも裁断の道具も進化し、スキャンは文庫本1冊で3分ほど、断裁を入れても8分ぐらいで済むらしいことがあるBlogに書いてありました。レンタルビデオ屋で借りてきたCDやDVDをせっせと読み込むのと大差ありません。
もうずいぶんと進んでいるんですね。
それに、池田信夫Blogでは、こうした行為を「自炊」と呼ぶことが紹介されています。10年前にNapsterの普及でCDの世界に起きた事態が、書籍の世界で始まっている、ということですがまさにそういう気がします。
「日本では出版契約をほとんど結んでいないので、出版社は著者とひとりひとり交渉しないと電子出版はできない。」「このままでは日本の電子出版は大きく立ち後れ、違法コピーが蔓延してマンガ雑誌が立ちゆかなくなるおそれがある。」と池田氏は書いていますが、そのとおりでしょう。
というわけで、iPADのコンテンツは、なんのことはない、どこの出版社でも、卸売会社でも、IT企業でもなく、「自炊」が担うことになりそうです。
そうなると、BookOFFで買ってきた、安い古本をばらして読み込むと、本自体は捨ててしまい、あとはiPADで何冊も持ち歩いて読む、というスタイルが定着するのではないでしょうか。ばらしてしまうので、レンタルしてきて返却するわけにはいきませんが。

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