とても複雑な仕事はじめの1週間

今年のスタートは、個人的には絶好調なのだ。
仕事へのエネルギーが充満している感じ。
企画書を書きまくり、アポを入れまくり。
たった1週間でずいぶん多くのことが進んだ。
というのも、この数ヵ月間、10年以上前に仕事をした人たちが次々にベストセラーを出しているのを見て、どうもぼくは自分のすぐ近くに大事にすべき人たちがたくさんいることを見落としていたような気がしたのだ。


まだ出たての才能をメジャーにしていくのが、ぼくは好きだった。
いったんメジャーな存在になってしまうと、こちらが少し冷めるのと他社からどんどん彼らに仕事がくることもあって、しばらく遠ざけてしまう。
でもやっぱり、わりと若くしていいものを書いた人は、ずっといいものを書ける人が多いのだ。
その結果、メジャーになったばかりよりももっと著名になって、大きなベストセラーを生んでいく。
そのことがやっとわかってきた。
すでにぼくは、すごく才能がある人たちを知っていたのだ。
昔の名刺をひっくり返しては、あ、あの人も今こんなにすごくなったんだ、ということが頻発していた。
なんだ。
だったらもう一度、その人たちと仕事をしよう。
正月休み中にそう思った。
昔なじみだから話は早い。
とんとん拍子に面白い企画ができていくのを実感した1週間だったのだ。
しかし同時に、業界では2つの経営破たんが起きた1週間でもあった。
両方とも民事再生だが、新風舎は、自費出版で著者から制作前に受け取る前受け金が業界でもきわめて安かったらしい。
本を書店に置く契約が守られていないという訴訟がきっかけに依頼が減り、前受け金が減った。
それが資金繰りにダメージを与えたと推察される。
より悲しいのは草思社だ。
スポンサーを探しているそうだが、あの会社独特の雰囲気は絶えてしまうだろう。
才能あふれる編集者をかかえても、個性的なブティック出版は立ち行かないと言われたに等しい。
業界の先行きの厳しさは、おそらく未曾有のものになるだろう。
そういう危機の中、編集者として生き残るために焦っているだけの1週間なのかもしれない。
でも、今の危機感というのは、個々にはケースバイケースとしても、多くの人が共有できる危機感だと思う。
それはかつて、冷戦が終わった頃、その変化についていけず、日本全体が戸惑った時に似ているのかもしれない。
事実、最近、新聞などで見る論調は、ものずこく大雑把に言うと、プレーバック90年代。
既得権益を持つ世代と40代オピニオンリーダーの対決の時代がもう一度来ているような。
この1週間はだから、妙にデジャビュな、30代の自分に出会ったようでもあったのだ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です