地方消滅と再生のための3つの処方箋

2014年の夏、元総務大臣の増田寛也が発表した(編著)『地方消滅』が、論議を巻き起こした。少子高齢化の日本社会に何も手を打たなければ、896の市町村が消滅する、というのである。消滅といっても、何も国土が消えてしまうわけではなく、2010年から40年までの間に「20〜39歳の女性人口」が五割以下に減少し、税収は減り、自治体サービスを継続できない事態に立ち至る、ということだ。これらの市町村を、この本では「消滅可能性都市」と刺激的な言葉で呼ぶ。

地方の消滅は、出生率の低下(自然減)だけで起こるものではなく、人口移動、すなわち社会減にも起因する。また、出生率は最高の沖縄県が1.94であるのに対し、東京都は1.13であり、概して人口稠密な大都市圏のほうが、地方より低いことが証明されている。平たく言えば、地方には職がなく、かといって東京は子供を産み育てる環境にない、というのが今の日本の現実だ。

無論、この本では地方を消滅させず、「防衛・反転線」を構築するにはどうしたらいいかの処方箋がいくつか出てくる。そのひとつの例が岡山県真庭市の林業再生の試みだ。これら地方再生の具体策については、藻谷浩介とNHK広島取材班の著書『里山資本主義』が取り上げている。

真庭市は人口五万の山村地域であり、市内には30の製材業者がある。建築材ではジリ貧ということで、日本で先駆けて木質バイオマス発電を手がけている。これにより製材工場の中で使用する電気の100%を賄っているということだ。また、広島県の庄原市では、不要な山の木を使う、エコストーブなるものを開発。暖房機器であるとともに、煮炊きなどの調理に力を発揮しているという。

「「里山資本主義」とは、お金の循環がすべてを決済するという前提で構築された「マネー資本主義」の経済システムの横に、こっそりと、お金に依存しないサブシステムを再構築しておこうという考え方だ」とこの本では言う。発売から2年以内に消える新商品の率は、実に「52%」だという。無駄を排して産業を起こし、地方に雇用を呼び戻そうというのが、地方再生の処方箋のひとつだ。

この2冊はわりとハードな地方再生論だけれども、もっとソフト面に注目した本が、中沢明子の『埼玉化する日本』だ。地方へ行くと駅前の古くからの商店街がシャッター街化する一方で、郊外に次から次へと巨大ショップモールが立ち並ぶ。彼女は埼玉の3大ショップモールが起点で、日本が埼玉化している、という。
そして、高感度消費と合わせて、マス消費も気軽にできる地方のショップモール化こそ、「埼玉化するべき日本」だというのだ。つまり、「ソフトの話が抜け落ちた地方再生論、商品街再生論は、ともすれば机上の空論になりかねない」。埼玉をモデルとした、若者が住みやすく、生産だけでなく消費できる日本をめざそう、というのがこの本の主張である。

これら3つの本は、ハードからソフトまで地方再生をすべきという点では見解が一致している。合わせて読むことをお勧めする。

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