「大臣、ここはひとつ、あの手でゆくしかありません」大臣秘書が、耳打ちして言った。
「いや、おれは最近、血圧が高くて、あまり酒は飲まないことにしてるんだ。それに、過去、ずいぶんと酒で失敗しているしな。3年前の農相のときの国会答弁だ。あのときも酒と風邪薬で朦朧としてきて、最後は何をしゃべっているのかわからなくなった。考えてみるとあの頃は、政調会長もやっていて、ストレス溜まって飲んでばかりいたんだ。それに小泉内閣のとき、経済産業相をもう1回やれというのも寝耳に水で、もう飲んでしまったあとだった。内閣改造で解任と決まったのに、いきなり再任だからな。あれには参ったよ」財務大臣はあくびをして言った。ゆうべもずいぶん飲んだらしい。
カテゴリー別アーカイブ: 連作短編小説(不定期掲載)
某国のイージス
海上自衛隊、第三管区海上保安区所属のイージス艦「あなご」は、高知県沖合いにて、国籍不明の潜水艦の暗号無線通信を傍受した。
以下、暗号文の解読。
「お、ついに領海内に入ったぞ」
「艦長、いいんですか? 浮上しなくて。領海内は国際海洋法で、潜水航行は認められていませんよ」
イフ 歌舞伎町で起きた奇跡の物語
昨晩、久しぶりに歌舞伎町ゴールデン街の店「イフ」に行った。
いつの間にか開店3年目になった。
2004年10月にオープンした頃は、ママの元からの知り合いしか客がいなかった。
やっていけるのかなあ、と正直思った。
しかしママ紀江さんの前向きな人柄が男女ともにウケたのだろう。
ママを好きな女性客が多く常連になったことが成功の秘訣かもしれない。
新しい客がどんどん増えて、ぼくら昔なじみは最近ちょっと片隅に追いやられ気味。
開店した当時、まだ真新しいカウンターに座って呑んでいたとき。
たまたま隣に、通信社の東京特派員という人がいて、思いついたのが「イフ」という小説だ。
自分を諜報員と思い込み、世の中すべてをそういう視点でしか見られない。
しかしなぜか、そのカン違いが人の心の真実のもっとも近いところにたどり着く。
誰よりもいい加減でダメそうな探偵や刑事が、誰よりも正確に犯人を見抜く。
そういうパターンの海外ミステリーがある。
もっとも難しい書き方だと言う人もいる。
それを一応はめざしたつもり><;
沢崎という名前はもちろん、原りょうの探偵小説の主人公へのオマージュ。
今のところ第一話から第四話まである。
もう3年から2年近く前に書いたものだけど、もしよければ読んでください。