カテゴリー別アーカイブ: こんな時には、こんな本

宮崎学の『ヤクザと日本』(ちくま新書)を読んだ。

想像していたとおり、宮崎学は、ヤクザ擁護論を周到な準備の上に、さまざまな角度から説いている。日本のヤクザが、欧米のマフィアとちがって、いかに仁義に厚いか。さらに、ヤクザの起源は芸能民と関係があり、近世のヤクザは庶民にとって必要な自警団の役割も果たしていた、というのである。近代のヤクザは、戦後資本主義の勃興に伴って、権力に利用され、はたまた捨て去られた、周縁の存在となっている。・・・などなど。

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一年締めくくり本は『私の男』

今やたら評判がいい吉田修一の『悪人』で一年締めくくろうと思っていた。
けれど、あいにく本を会社においてきてしまった。
かわりに手元にあったのは、桜庭一樹の『私の男』。
僕がもっとも信頼している本読みの一人、読売新聞文化部の主である鵜飼さんが、紙上で今年ナンバー1と絶賛していた小説だ。

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ウェブ時代って、何?

さて、それでは『ウェブ時代をゆく』を読んでみよう。タイトルからして、新しいコンピュータ文化を論じている本だと想像して読んだのだけれど。
そもそも、ウェブ時代って、何だろう。パソコン時代とか、インターネット時代とか、ではなく、ウェブ時代とは。

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ビジネス書は自己快適化チューンナップの部品

「ふとあるとき愛読書『シャーロック・ホームズの冒険』に没頭しながら、自分は「私立探偵の在りよう」に少年時代から心惹かれてやまなかったことを思い出した。」
『ウェブ時代をゆく』にある、この「在りよう」、それも一つではなく、これこれの仕事をするときの誰かの「在りよう」。
それに学ぶことが、梅田望夫がいう「ロールモデル思考」だ。
対象がたとえシャーロック・ホームズのような荒唐無稽な存在であってもいい、という。
この部分がぼくにとって、もっとも印象的だった。

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ウェブは「志」を助ける

ぼくは梅田望夫徹底肯定派である。
『ウェブ進化論』の続編にあたる『ウェブ時代をゆく』にも心打たれることが多かった。
思い切り要約すると、あとがきにある「「志」さえ持てば、ウェブは「人生のインフラ」として「個」を大いに助けてくれる」が、この本全体の主張のように思った。
自分の仕事、あるいは仕事で考えているさまざまなこと。
この本を読んで実にいろいろと考えさせられた。
その自分なりの考察は追々ここで書こうと思っている。
今回は抜き書きを以下に(数字は掲載ページ)。

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ミシュラン・フィーバーはグルメ文化の退行現象?

『ミシュランガイド東京2008』、たまたま知人が持っていたのでパラ読み。
店側のコスト負担もあったと聞くが、カラー写真が豊富で、客観的に言って版元がコスト面で存分にリスクを取った労作だと思う。
神田明神でミシュランの幹部が成功祈願をしたというのも、むべなるかな。
「ミシュラン」というブランド名がなければ誰も失敗が怖くて手がけられない企画だ。

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52歳リタイアの夢

藤沢周平の『三屋清左衛門残日録』。
52歳で藩主の側用人を辞した清左衛門。
その意外と忙しい隠居生活を描いた、あまりにも有名な短編連作小説。
時代小説嫌いの私は食わず嫌いを続け、白状すれば藤沢周平を読むのさえ初めて。
いやしかしこれは本当に名品と言うほかない。
ぼくもこういう老境にリアリティを感じるようになったということかもしれない。

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新書の山の中に見つけた、宝石

内田樹著、『私家版・ユダヤ文化論』(文春新書)を読んだ。
毎月、山ほど新書が発刊される中で、読んで少しでも面白い本を探すのはたいへんだ。ましてや、読んでよかった、と思える本など希少価値だろう。
そんな中に、たまに掘り出し物を見つけると、ずいぶんと得をした気分になる。いや、今回紹介する『私家版・ユダヤ文化論』は、タイトルからすると、とても売れる本には見えないけれど、そして、読みたくなるような本ではないけれど、読んでよかった、本なのだ。いや、現代を読み解く上で、必読と言ってもいいだろう。それに簡単に読める、新書の形式だ。なんでこんな本が、新書の山の中に埋もれたままなのであろう。と、思っていたら、小林秀雄賞を受賞した。これで陽の目を見るというものだ。

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努力型の進化論

どうせ有名企業家の自慢話。
そう期待しないで読んだのがよかったか。
三木谷浩史『成功のコンセプト』、かなり面白かった。
ネットバブルの崩壊からしぶとく生き残っているのは、「仕事は楽しい」と言い切るベタな努力主義?
それが、ネット企業に対する期待感がはがれた今でも、違和感なく本書を読めた理由かと思う。

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吉野屋では特盛を頼め?

『スタバではグランでを買え!―価格と生活の経済学』がメチャ売れ。
「値段から社会のしくみが見えてくる」というオビのコピー。
それにサブタイトルからわかるように、そんなに新味のある内容なの?という感じ。
むしろ地味。
スタバものも、ちょっと飽き飽き。
それなのに、それなのに。
ビジネス書編集者から見たら、うらやましい限りだ。

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