政治の「空気」(311後の世界8)

空気の話はこれぐらいにしようかと思っていた。
が、空気を読める政治家が発言したので、取り上げたいと思う。
およそ、政治家にして空気が読めなければ、政局の潮目も読めない道理であり、政界を生き抜いてゆくことなど到底かなわないだろう。
政治の一寸先は闇とよく言われるが、それは空気の読めない政治家の台詞であって、政治家は一寸先を見通すどころか、一瞬のうちに身を翻してみせることも芸のうちだ。
たとえば、犬猿の仲と思われていた、民主党の渡部恒三最高顧問と小沢一郎元代表が、よりによって合同誕生会で和解するなどということは、事情のわからぬ外野から見れば、一大椿事にちがいない。が、そもそもこのふたりは、表面的には仲が悪いように見えるけれど、お互いが相手を利用しあっている関係なのであり、現に前原誠司前外相がこの誕生会の音頭取りであるのがその証拠だろう。
渡部最高顧問は、小沢元代表に近づくことによって、自らが推す、ポスト菅の首相候補が前原前外相であることを印象付け、自らは衆院議長など名誉職就任のお墨付きをもらうつもりでもあるのではないか。
菅首相がG8に出かけている隙に、あっという間に身を翻す老獪さ。79歳にしてこうなのだから、政治家たるもの、空気を読んで豹変するぐらい朝飯前にちがいない。
いや、民主党内の政権たらいまわしなど、この際どうでもいいだろう。
空気の読める政治家の発言とは・・・


・・・それは、5月28日の神奈川県横須賀市の講演での、小泉元首相の発言だ。曰く「自民党政権も原発を推進し、過ちもあった。これから原発を増やすのは無理で、大事なのはいかに原発への依存度を下げていくかだ」と述べたという(読売新聞記事)。
いまだに国民に人気の高い元首相の発言は、自民党内にも波紋を呼んだことだろう。内容的には、G8で菅首相が述べた、2020年代の早い時期に、自然エネルギーを全発電量の20%以上に増やすという国際公約とちがいはない。
が、発言したのがかつて原発拡大政策を推進してきた自民党の政治家、それももっとも空気の読める政治家の言葉であるなら、話は別だ。
しかも、同じ日に、もっとも空気の読めない政治家かもしれない、麻生元首相も、国士舘大で講演して、「原発はコストが安いが、危険をきちんと計算しなければ間違う」と述べたという(読売新聞記事)。ちゃんと空気が読めているではないか。
とすれば、誰よりも空気が読めていないのは、経団連の会長ぐらいだろう。あまりに空気の読めない人たちの集団であるため、楽天の三木谷会長は、経団連脱退を検討しているのだとか。
ことほど左様に、今の空気は、浜岡原発が止まったとたんに様変わりを始めたらしく、仕かけたのが政権党の首相であっても、機を見るに敏な野党の政治家は敵方の政策だろうがなんだろうが、丸呑みで先んじてゆくにちがいない。
面白いのはこれからの選挙だ。原発是か非かは、そうでなくても争点に浮上し、原発依存の政治家はあっという間に基盤を崩されてゆくだろう。今の空気からして、あっという間に政治家廃業となるにちがいない。
とすると、福島県選出で原発を今まで推進してきた議員の旗色は、相当悪くなるだろう。たしか、福島県出身で、早稲田の一文卒、厚生大臣時代に原発を推進していた、元竹下派の議員がいたはず・・・それは、民主党の渡部恒三最高顧問だ。なるほど、それでいまさら小沢元代表に接近か。ここにも空気の読める政治家がいるということか。

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