カンニングが刑事事件か

あらためて言うまでもなく、今の世の中で大きな事件には、IT技術が関わっている。
京大カンニング事件は言うまでもなく、海上保安庁職員のyoutubeでの尖閣ビデオ流出の経路もそうだ。
政治家が自らの地位を失う原因も、最近はほとんどと言っていいほど、ネットからの流出情報ばかりである。故中川昭一元財務大臣が先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)で、酒に酔った姿も、youtubeで全世界に流されてしまったし、前原外相が、民主党代表を辞任したのも、偽メール事件が原因だ。
相撲の八百長が発覚したのも、IT技術が進歩して、携帯電話で消去していたはずのメールの記録が再生されてしまったからだった。いや、大昔のフロッピーディスクでさえ、下手な手つきで改竄したため、郵便不正事件をめぐる、大阪地検の前特捜部長らの逮捕という大事件に発展する。


どこもかしこも、監視カメラや、個人が携帯端末で撮影した映像記録にデータで残されていて、ネットを通じてあっという間に全世界に広まってしまう恐ろしい世の中だ。
それかあらぬか、京大受験生のカンニング事件が起こると、またぞろ未知のハイテクが駆使されたのではないか、と大騒ぎになった。
が、マスメディアが大騒ぎをしたのは、受験制度という日本社会の屋台骨を支えるしくみが揺らぐのではないかという懸念からではないか。
マスメディアのみなさんは、苦しい勉強を(アナログで)乗り越え、いまや高給取りとなり、受験制度の恩恵をたっぷりと享受しているにちがいない。その大事な受験制度が、得体の知れないIT技術によって土台から崩れ去ってはたいへんなことになる。
・・・というような思考プロセスがあったため、外部に協力者がいるだとか、aicezukiは、「いくぜCIA」の逆読みだとか、いや「アイス好き」の謂いだとか、2ちゃんねるのただの雑談を、公共放送で取り上げたりすることになるのだろう。(逮捕された受験生によると、特に意図はないそうです)
今回の事件、昔からあるカンニングの現代版だとしたら、受験生の行為は確かにルール違反だが、京大の試験監督の不行き届きも糾弾されてしかるべきではないのか。
それを等閑視して、受験生を刑事犯に仕立て上げて、問題の在り処をすり替えようとするのは、いかがなものか。
中国の科挙の試験中でも、さまざまなカンニングの技法が記録に残っている。
というよりむしろ、科挙制度そのものが、カンニングの歴史でもあり、制度の複雑化に加えるに、次から次へ現れる不正のせいで、制度疲労を起こして崩壊したのだ。
今の大学の「一芸入試」などというものも、丸暗記の試験だけではなく、幅広い分野の優秀な人材を集めようという意図からなるものだろうが、その目的にかなっているかどうか、怪しいだろう。
そうだとするなら、カンニング受験生の壮挙は、科挙がそうであったように、今の受験制度が形骸化していることに対しての警鐘となった部分もあるだろう。(そんな意図は毛頭ないにせよ)
それにしても、たかがカンニングではないのか。
刑事犯になったら、受験生の一生は台無しだ。丸めたカンペをチラ見するのは、古典的なカンニングだから刑事事件にはならないが、ネットを使えば逮捕なのだろうか。いや、これからはカンニングはすべて刑事犯人になるのだろうか。
そんなことなら、受験生は恐怖におののいて、試験監督などもういらないだろう。

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