国母和宏を讃える

突然ですが、あなたはバンクーバーオリンピック、男子ハーフパイプの日本代表選手、国母和宏が嫌いですか? いや、彼を嫌いではないまでも、「腰パン」と呼ばれるパンツの履き方や、人を小ばかにしたような会見への応対を我慢ならないと思いますか?
日本の代表なんだから、服装も発言も、品位があるべきだ? そうですか。なかなか手厳しいですね。
でも、あれだけバッシングされながら、8位入賞は賞賛に値すると思いませんか? メダルを取らなければ、あれだけの騒動は帳消しにはならない? そうですか。ダブルコークスクリューの着地が決まっていれば、日本に貢献できたのにですって? いつの間に、スノーボードの技の名前も覚えたんですね。


では逆に、金メダル候補として持ち上げられて、4位に終わった上村愛子と比較してみてはどうですか? メダル候補、いや日本の数少ない金メダル候補の一人ですよ。その結果が4位なんですからね。
いや、上村愛子もよくがんばったけど、結果が出なければダメだ? これまた手厳しいですね。4位だなんて、快挙ではないですか?
やはりメダルですか。長島、加藤、高橋はよくやった、しかし、国母は「腰パン」で8位では許容できませんか。
厳しいですね! 国母こそ立派ではないですか?
そういえば、サッカーの元日本代表の中田英寿なんかも、無愛想な応対でマスコミによく叩かれていました。それがいまや、財団を作って、スポーツ振興のため尽力しようというのですから、商業主義に染まったオリンピック選手たちは、爪の垢でも煎じて飲ませてもらうほかないんじゃないですか?
朝青龍だって、斜陽の国技をあれだけ盛りたてたのに、ポイ捨てですからね。日本のマスコミは酷いと思いませんか? やはり「横綱の品格」に悖りますか。朝青龍関も「品格、品格と言いますけど、土俵に上がれば鬼にならなくちゃならないんですよ」と流暢な日本語で弁明していたと思いますが、そんなに「品格」が大事ですか。
私などは実に短絡的なので、日本経済が低迷から脱することができないのは、国母批判などに血道をあげているマスコミはじめ、旧メディア(古くからある新聞、雑誌のことです)の思想が時代に追いついていないせいである、などと考えてしまっています。ほんとに短絡的だなあ、ですって? まあ、そうおっしゃらずに。
それかあらぬか、護送船団方式で守られた、重厚長大の国策企業の最たる例であるJALは破綻してしまいましたし、すべての日本企業が見習うべき模範企業ということで教わってきたトヨタは知らない間に進化を止め、時代から取り残されてしまいました。あなたは、カンバン方式とか、カイゼンとか、5つのなぜ、とか、耳にたこができるほど聞かされてはきませんでしたか?
仕事でミスったとき、上司から、「おまえは問題を深く掘り下げて考えないからいけないのだ。なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、と5回繰り返して考えてみたか? それが2008年に世界最大の企業になった、物事を深く考えるトヨタのやり方なんだぞ」云々。
しかしまあ、いくらあなたでも、いつまでもトヨタの栄光が続くと信じていたわけではないでしょう? 子ども社長がぐずぐずしているうちに、アメリカではあっという間にトヨタ批判の世論が形成されてしまいました。
もしかしたら、日本人はオリンピックにうつつを抜かしている暇はないのかもしれません。放っておいたら、国を代表する企業が傾いてしまいかねませんから。
それはともかく、いずれ我々は、21歳の国母のような世代によって、国を支えてもらう必要があるでしょう。ささいなこと(服装の乱れ? 無愛想な応対?)で目くじら立てているようでは、この先が思いやられます。そうではないですか?
いまや都知事をやっている作家も、若い頃はずいぶん破廉恥な小説を書いて物議をかもしました。タイガー・ウッズだって・・・いや、これはよくない例でした。
それでも国母を許せないって? あなたは、よほど品行方正な青春時代を送ったのですねえ。いやあ、参りましたな。優等生なんですね。私など、とてもおつきあいいただけないに違いない。
しかし、実際のところ、つきあいきれない優等生ばかりが幅を利かせる日本は、知らない間にこんなに国力が衰えてしまったではないですか。それとこれとは別ですか?
あなたとは、ずいぶん考えがちがうようです。腰パンがよほどお嫌いのようですね。ただのファッションなんですけどね。
公務員を父親にもつ若者は、少しぐれた人間に育つ、と聞きました。公務員の父親をもつ友人に、です。全然、ぐれていませんでしたけどね、彼は。自衛官の父親に厳しく育てられた国母は、きっと立派な大人になるにちがいありません。
いや、今でも十分立派です。8位入賞を賞賛したいです。あなたがなんと言おうと、ですけどね。

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