田舎のポスター

ついに衆院解散、総選挙だ。
案の定、解散直前に自民党内は裏切り者(与謝野馨財務相)が出たり、反乱軍(中川秀直、武部勤両元幹事長、鳩山邦夫前総務相ら)が蜂起したりしたが、解散のその日は腰砕けでおとなしくなった。彼らといえども、公認を失えば、もし小選挙区で負けた場合、比例区での復活の目がなくなるからだ。
関係ないのに割を食らったのが自民党の都議会議員たちで、都政に対してというよりも、国政への不満のせいで、落選の憂き目にあってしまった。そんなわけで、彼ら同様、麻生首相と心中するのはごめんだと、現役衆議院議員たちが思ったとしてもしかたないだろう。


一方の民主党は、都議選の勝利に勢いづき、自信満々で今回の選挙を迎えているようだ。40日間は少し長いとは言えるが、そのあいだに自民党が巻き返しを図るのは無理だろう。
4年前の郵政選挙で、代表辞任に追い込まれた岡田克也幹事長は、「小泉改革は正しかった」とかなんとか、今になってわけのわからないことを言っているけれど(テレビ出演で)、彼にとって、今回の選挙は180度立場の入れ替わったそれだろう。もっと自信をもって、暗い顔をせずに自説を開陳したほうがいいのではないだろうか。
郵政選挙では、自民党の中にも裏切り者が出て、小泉元首相は容赦なく公認を取り消すと対抗馬を擁立した。それを世間は(正確には、「マスコミは」)「刺客」などと呼んでもてはやし、自民党の地滑り的圧勝を演出することになった。
今回、選挙参謀に徹している小沢一郎氏は、自民党の大物候補の選挙区に、知名度の高い女性候補を次々と送り込んでいる。公明党の太田昭宏代表の東京12区には、青木愛参院議員。自民党の福田康夫前首相の群馬4区には、元フジテレビ記者の三宅雪子氏。町村信孝元官房長官の北海道5区には、小林千代美前衆院議員といった具合だ。マスコミは、またまた「刺客」などと呼んでいるけれど、こう呼ぶ背景は、マスコミが演出する民主党圧勝への期待感に答えているつもりなのだろう。
たしかにこうも景気が急降下し、給料が下がるどころか、身近の人間がどんどん職を失う現実を目の当たりにして、閉塞感打破のために政権交代でもしなければ解決しない、と思うのは当然だろう。たとえ、政権交代しても、状況はあまり変わらなかったにしても。
世間は、郵政民営化にわかりやすい改革の象徴を見て、小泉自民党に投票したのだから、よろずに反動的な麻生自民党を、同じ自民党とは見ていないのだ。これをポピュリズムと呼ぶ人は呼ぶが、私は庶民のまっとうなリアリズムであると言いたい。
民主党が勝利し、それでも政権の座に着くやいなや、官僚をコントロールできずにもう一つの自民党と化してしまえば、あっという間に信を失うことだろう。
しかし、一番怖いのは、2大政党の勢力が拮抗し、両者の間でキャスチングボートを握る小政党が、まともな党でない時だ。政権の帰趨を小政党が握ったりすると、改革の身動きが取れなくなり、結果、船は前にも後ろにも進めなくなってしまうだろう。そうならないことを願うが。
4年前の選挙では、小泉元首相と並んで笑顔を作っていた田舎の自民党公認候補のポスターも、今回ばかりは麻生首相と並んだヴァージョンとは別に、舛添要一厚生労働大臣や小渕優子少子化対策担当大臣と並んだそれのほうが目立っている。麻生総理のぼやきが聞こえてきそうだ。

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