道路族とガソリン代値下げ

政治が迷走して、日銀の総裁は決まらず、テロ対策特別措置法も、租税特別措置法改正案も頓挫してしまった。が、ふだん生活者は、日銀総裁が誰であろうが、遠い国の戦争がどうなろうが、自分のこととは思わない。まあ、それがフツーの感覚だろう。
私もどちらかといえば、フツーの感覚のフツーさを大事にしたいと思っているのだが、偉い先生方はそうではないらしい。


批評家も大新聞も声をそろえて、衆参両議院の与野党勢力のねじれ現象を憂慮しだした。それだけでは止まらず、何かと与党案を妨害する民主党に自重を求めるようにもなってきた。
曰く、世界経済が未曾有の危機に晒されている今の時期に、日銀総裁が決まらない国などというものは、世界の笑いものである、と。珍しく見た、土曜の朝のワイドショーで関西大学の白石真澄教授も、そうおっしゃっていた。
さらには、ねじれ現象をもたらしているのは、衆議院と参議院という立法府に二つの議会があることが原因だとして、識者やマスコミは、今さら二院制を問題にしだした。曰く、平等な第1院、第2院がある国は、日本以外にはイタリアぐらいしかない。そのイタリアも、しばしばねじれ現象で、政治の膠着状態を招いている、と。
そりゃあ、たしかに、二院制も問題はあるだろう。しかし、たしか社会科の教科書では、民意を汲み取り、議会で議論を慎重に進めるためには、ふたつの議会が必要だったのではないだろうか。学校の先生の、あの説明はいったい何だったのだろう。
それはともかく、参議院で優勢なのだから、民主党はことごとく与党の議案に反対するに決まっているのだ。そうでなければ、苦労して選挙に勝利した意味がないであろう。無論、そうすることによって議案の審議は滞り、あちこちに不具合が出てくるのは明確だ。しかし、国民はそれを承知で野党に票を投じたのだろう。そうではないのか。
与党、自由民主党は、これ以上政治の停滞を招くのなら、解散して民意を問うしか道がない。そうして、選挙の結果次第では、党を割って政界再編を行うか、あるいは勝利して民主党を飲み込んでしまうか、どちらかであろう。
今さら憲法を改正して、一院制にしたり、衆議院の優先権を拡大したり、と法を整備している暇はもうないのだから。
一方では、ついに、と言っていいかどうかわからないが、福田首相が道路特定財源を09年度から全額一般財源化すると約束した(3月27日)。約束、なんだろうな、あれは。
自民党の内部は、反対一色だというが、そりゃそうだろう。この道路特定財源という代物、田中角栄が作った道路族議員の利権の源泉だ。これがなくなれば、道路に拠った議員は足場を切り崩されてしまう。まあ、田中政治の遺物そのものであるから、福田政治(福田赳夫元首相の流れ)を遠く引き継ぐ現首相にとっては因縁の代物だろう。
道路特定財源というパンドラの箱に、小泉政権も安倍政権も、ついに手をつけることができなかった。それがなんと、福田政権によって開かれようとしているのだ。
というわけで、福田首相はカードを切ったのだけれど、民主党はまるで話しに応じるそぶりもみせていない。いよいよ3月が終わりに近づき、ガソリンスタンドはガス欠ぎりぎりまで我慢した車が4月1日に押し寄せることだろう。
と、ここまで書こうと思っていたら、今度は首相、ガソリン税の暫定税率は維持すると新聞のインタビューで答えた(29日)。ということは、いったん期限切れとなった租税特別措置法改正案を衆院で再可決する決心を固めたということだ。道路族の圧力に、ビビッてしまったのだろうか。
いったん下がるガソリンが、また上がるということか。そのあいだに、マイカーのガソリンを満タンにしておこう、という人が増えることだろう。かくいう私も、リッター145円のガソリンが、120円になったら・・・と思わないではない。
が、しかしまあ考えてみると、ほんとうはこの25円が税金となって、地方の道路建設に回り、地域経済の発展に寄与するのであるけれど。。。
ふだん生活者は、日銀総裁が誰であろうが、遠い国の戦争がどうなろうが、自分のこととは思わない。まあ、それがフツーの感覚だろう、と書いた。
しかし、ガソリン値下がりは、そうは行かない。生活者にとって、ガス代の値上げ、値下げは大問題だ。ふだんマイカー族は、GSの看板のリッター○○円を睨み、1円の違いで比較購買しているのである。ましてや、リッター25円の値下がりといえば、各GSがそのとおりに値下げしているかで、ブレーキを踏むかどうか、決めるに違いなかろう。
地域経済がどうなろうが、ガソリンを安くする政党がいい政党なのだろうか、もしくは地球環境に配慮してガソリンの使用を抑制して排気ガスを減らす政党がよりよいのだろうか。
租税特別措置法という箱の中には、道路族の跳梁跋扈と、ガソリン代値下げという、触れてはいけない魔物が住まっているようだ。
私は少し前に土地を購ったので、この法律の恩恵を被ったひとりなのであるが。。。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です