熱狂を忘れた岡田ジャパン

中国の重慶で17日、3回目の東アジア選手権が始まった。
日本の初戦は北朝鮮だった。
韓国対中国の熱戦の直後だったため、けっこう観客席が埋まっていたようだ。
日本代表が登場すると、3年半前のアジアカップのときほどではないにしろ、ブーイングというか怒号のような異様な声が起こる。
まあでも、そうこなくっちゃね、とも思うのだ。
別に毒入り餃子事件と関連させておもしろがるためでなく、日本の強さの証として、だ。


試合はご存じのように、開始早々、川崎フロンターレのエースストライカー、ジョン・テセがゴールを決め北朝鮮が先制。
日本は後半に岡田監督が交代投入した2人の選手によって同点に追いついた。
アンダー20で活躍したガンバ大阪の安田は左サイドハーフに起用され、内田に追われて慣れない左サイドバックをやらされた加持、たしかにセンスがいいけれどもうひとつ攻撃的な積極性に欠ける内田がほとんどできなかったサイドを深くえぐる勝負に出た。
ゴールに直接向かうように見えたクロスを思わずキーパーがはじいたところにいた前田の得点は、3割くらい幸運だったかもしれないが、安田の突破がなければ生まれ得ない幸運だった。
このサイドの選手起用にはどうかと思うところもある。
内田と加持をこういう形で使うと、この両者にあいだに競争が生まれない。
それは両方にとってよくない気がするのだが、岡田監督は試合の勝敗よりも選手のテストをしたかったのだろう。
東京で行われた第1回の東アジア選手権は、ジーコがディフェンスの要に中澤を据えたきっかけになった大会だった。
サイドの選手起用については目的があるのだから外野がとやかく言っても始まらないだろう。
問題はその得点後なんである。
2点目を取りに行ってほしかった。
なぜ内田を駒野に代えるのか。
がむしゃらに2点目を取る姿勢を見せてほしかった。
せっかく前田を入れたのだから、前田に当てに行ってほしかった。
ところが、残り5分を切っても後ろでボールを回している。
中澤でさえ上がっていかない。
北朝鮮のカウンターが怖かったのか。
ならばドローで終わらせることは勝負にこだわった結果とは言える。
しかし、格下チームのカウンターが怖いというなら早く修正すればいいと思うのだ。
岡田監督は試合後に「北朝鮮が引かずにプレスをかけてくるとは思わなかった」とインタビューに答えていたが、まったく甘いと思う。
ワールドカップ三次予選初戦のタイ戦は大勝したが、それはいかに進境著しいとはいえ所詮はタイだからだ。
今の岡田システムの最大の弱点が鈴木啓太のワンボランチにあることは敵将ならすぐわかるのではないか。
しかも日本は中盤で細かくパスを回すから、ワンボランチなら中盤のプレスからボールを奪って前に持って行きやすい。
だったらそういう戦術を採ってくるのは当然だと思うし、事実、試合はその繰り返しだった。
後半に入ってもその欠陥を埋めず、カウンターを怖れ、追加点を奪う積極性を見せない。
これでは熱狂は生まれない。
大きなプーインクを浴びるチームにさえなれない。
テセは試合後、「日本を怖いとは思わなかった」と言ったそうだ。

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