紅一点論 ~企業組織のエヴァ的崩壊~

今年のゴールデンウイークは長かった。特段予定もないのに、5月1日と2日を休みにしたもんだから、9連休になってしまい(って、自分でそうしたんだが)、PDCAを回すことがかなわず(って、そもそもPがないよ)、毎朝やることがなくて往生しました。
こんな時には、こんな本、でしょう。
斎藤美奈子。しかも、『紅一点論』の文庫版。斎藤美奈子は、再読に耐えるんですよね、最近の物書きには珍しく。
『紅一点論』は、アニメや児童向けの伝記を、チームの中の紅一点の数、というところに着目して分析を行った、表象批評の名著。ほら、ウルトラマンの科学特捜隊も、ウルトラセブンのウルトラ警備隊も、女性隊員はひとりぽっち、つまり紅一点でしたよね。実に着眼点がいいですね。
さて、ウルトラマンの世界は斎藤女史曰く、戦争ばかりしている「男の子の国」の論理につらぬかれた、差別的なそれなんですが、対するに魔法使いサリーの日常はこれまた非科学的な魔法が跳梁跋扈する「女の子の国」です。それが、『機動戦士ガンダム』になると、論理が曖昧になってゆき、ついには『エヴァンゲリオン』になると、”腐った家族の世界”に到達します。なぜなら、男女の数の比率のバランスが崩れてくるから。。。


。。。という話を聞いて思ったのは、近頃の会社の中の風景と同じなんですね。私が入社した20年前の風景は、OL(これは、そもそも差別用語だが)は高卒で、まずはお茶くみが第一番の仕事。若くて職場の花、つまり紅一点というのが相場でした。まさに「男の子の国」でした。
それが今では、女子社員(という言葉も差別的ですが)は皆、大卒以上。お茶くみなんてさせられませんし(その部分の差別的労働は、派遣がやる)、第一、紅一点どころか下手をすると内勤だったら男のほうが数が少ないですから、花でも団子でもなく、能力第一主義です。
元々「男の子の国」だった会社が、何年かたってこうなると、一歩間違えば世界はエヴァンゲリオン的な腐ったそれに陥りかねないのではないでしょうか。いや、すでにもうなっているような気もします。つまり、出来上がったときから男性中心社会であったある会社組織は、男女の人数バランスが崩れて、紅一点でなくなったときに、いやに弱々しい若手男性社員と、ITも英語も堪能なスーパー女子社員がバランス悪く同居する、エヴァ的な世界になってくるというわけです。(最初から男女比が正常だった組織はいざ知らず)
のっけから、差別的、サブカル的な、話題になってしまいましたが。
私の友人は、紅一点どころか女性のほうが多い職場にいて、同僚女性に対して厳しいのですが、その視点は、能力でも、キャリアでもなく、ただ一言、「皆とにかく化粧が上手くないのよね…」でした。紅一点の花のOLなら、こんなこと、言いも聞きもしなかったでしょう。あ、ただしその友人も女性なんですけどね。彼女、男の視点を自己に取り込んで、女性を批評している、というべきでしょう。「鏡よ鏡、世界で一番美しいのはだーれ?」という魔法の国の呪文というべきか。斎藤美奈子によれば、魔法使いサリーに代表される「女の子の国」は、これまたバランスを欠いた非現実的な世界です。
私はどちらかといえば、崩れかけた「男の子の国」よりは、アニオタ女子の跋扈する未来の日本の「女の子の国」のほうを好ましく感じます。趣味の世界に閉じこもった、濃いキャラの女性たちが、オタク男顔負けの薀蓄を傾ける、そんなニュー・エリートたちの集団です。だいたいこういう女性陣は、母国語以外に英語とアジア語を話すんですよね。実に優秀です。まるでモビル・スーツを操縦する、女性戦士のように。会社組織もこんなだったら、どんなに希望にあふれていることか。。。
。。。しかし、こんな空想は、80年代オタクの成れの果ての趣味というべきでしょうか。

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